感情が爆発する瞬間
朝の通勤電車で、誰かに押されてイライラする。職場で、上司の言葉にカチンとくる。家に帰れば、家族の何気ない一言に腹が立つ。
こんな経験、ありませんか?
心の中で「言い返したい」と思う。感情が高ぶって、つい強い言葉を返してしまう。そして後になって、「あんなこと言わなければよかった」と後悔する。
怒りは、まるで火のようです。一度燃え始めると、どんどん大きくなっていく。そして、自分も相手も傷つけてしまう。
なぜ、言葉一つでこんなにも変わるのでしょうか?
同じ状況でも、返す言葉によって、場の空気は全く違うものになります。
怒りを倍増させる言葉もあれば、不思議と怒りを鎮める言葉もある。
その違いは、どこにあるのでしょうか?
古代の知恵が教えてくれること
聖書という古い書物に、こんな言葉があります。
「柔らかい答えは憤りを静める、しかし激しい言葉は怒りを引き起こす」(箴言15章1節)
この言葉が書かれたのは、今から約3000年前。古代イスラエルの知恵の書と呼ばれる箴言の中の一節です。
当時も今も、人間の感情は変わりません。怒り、悲しみ、喜び。そして、言葉が持つ力も、変わらないのです。
「柔らかい答え」とは、何でしょうか。
それは、相手を責めない言葉。攻撃しない言葉。相手の気持ちを受け止めようとする言葉です。
「激しい言葉」とは、反対に、相手を傷つける言葉。売り言葉に買い言葉。感情に任せた言葉です。
興味深いのは、この知恵が「怒らないようにしなさい」とは言っていないことです。
人間ですから、怒りを感じることはあります。大切なのは、その怒りをどう表現するか。どんな言葉を選ぶか、なのです。
古代の人々は、日々の生活の中で、このことを何度も経験したのでしょう。
市場での商売、家族との食事、隣人との関わり。そんな日常の中で、「柔らかい答え」が状況を変えることを、身をもって知っていたのです。
この知恵は、宗教的な教えというより、人間関係の実践的な法則と言えるかもしれません。
火に油を注げば、炎は大きくなる。でも、水をかければ、火は消える。
言葉も、同じです。
日本の日常で、どう活かせるでしょうか
では、私たちの日常で、この知恵をどう活かせるでしょうか。
職場で
上司に理不尽なことを言われた時、つい「でも、それは違います!」と強く言い返したくなります。
でも、深呼吸して、「おっしゃることは分かります。ただ、こういう状況もあるのですが、どうしたらいいでしょうか?」と聞いてみる。
相手の怒りに、怒りで返さない。それだけで、会話は変わります。
家庭で
夫婦喧嘩、親子の言い合い。感情的になりやすい場面です。
相手が怒っている時こそ、「そうか、そんなふうに感じていたんだね」と、まず相手の気持ちを受け止める。
すぐに言い訳をしない。すぐに反論しない。それが「柔らかい答え」の始まりです。
日常の小さな場面で
レジで並んでいる時、後ろの人がイライラしているのが分かる。そんな時、「お急ぎですか?お先にどうぞ」と声をかける。
些細なことですが、その一言が、誰かの一日を変えるかもしれません。
試してみませんか?
今日、誰かとの会話の中で、少しだけ言葉を選んでみる。
怒りを感じた時、一呼吸置いて、柔らかい言葉を探してみる。
完璧である必要はありません。少しずつ、でいいのです。
81年生きてきて、学んだこと
正直に言います。私も、ずっと感情的な人間でした。
タバコを1日80本も吸っていた頃、イライラすると、すぐに言葉で人を傷つけていました。
63歳でうつ病になり、仕事を辞めた時も、周りの人に当たり散らしていたように思います。
貧困の中、食費月1万円で暮らしていた時期。寒い冬、灯油タンクを担いで1キロ歩いた時。
心に余裕がない時ほど、言葉は荒くなっていました。
でも、67歳で聖書という古い書物に出会い、この「柔らかい答え」という言葉を知ってから、少しずつ変わりました。
今でも完璧ではありません。81歳になっても、つい感情的になることがあります。
でも、以前よりは、言葉を選べるようになりました。
一呼吸置けるようになりました。
それだけで、人間関係が変わりました。家族との関係も、周りの人との関係も。
何より、自分自身が、少し楽になりました。
怒りを爆発させて、後悔する日々から、少しずつ解放されていったのです。
あなたのペースで、あなたらしく
言葉は、心の鏡です。
でも、言葉を変えることで、心も少しずつ変わっていきます。
今日、難しい場面に出会ったら、この古代の知恵を思い出してみてください。
「柔らかい答え」を、探してみてください。
あなたの人生に、穏やかな風が吹きますように。
あなたは今日、誰かに「柔らかい答え」を返せそうですか?


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