職場で、つい誰かにきつい言葉をかけてしまったこと、ありませんか?
忙しさにかまけて、家族に冷たい返事をしてしまった。疲れていて、つい語気が強くなってしまった。そんな経験、私にもあります。
言葉は、目に見えないけれど、確かに相手の心に届きます。時には、ナイフのように鋭く。時には、温かい毛布のように優しく。
そして不思議なことに、傷つける言葉を発した後は、自分の心まで重くなっていくのです。
なぜ、言葉はこんなにも力を持つのでしょうか?
私たちは毎日、たくさんの言葉を口にします。でも、その言葉が相手にどんな影響を与えているか、立ち止まって考えることは少ないかもしれません。
古代の知恵が教えてくれること
古代の知恵の書に、こんな言葉があります。
「親切な言葉は蜂蜜のよう。心に甘く、体を健やかにする」
これは、今から3000年も前に書かれた箴言という書物の一節です。当時の人々も、現代の私たちと同じように、言葉の持つ力に気づいていたのですね。
「蜂蜜」という比喩が、なんとも温かい。
当時、蜂蜜は貴重な甘味料でした。病人の栄養源として、また傷の手当てにも使われていたそうです。つまり、ただ甘いだけではなく、癒しの力を持つものとして大切にされていたのです。
親切な言葉も、それと同じ。
心に甘く染み込んで、疲れた魂を癒してくれる。そして、体まで健やかにしてくれる。言葉には、そんな不思議な力があるというのです。
逆に考えれば、きつい言葉は心を傷つけ、体まで弱らせてしまうのかもしれません。
日常の小さな場面で
では、どうすれば親切な言葉を口にできるのでしょうか。
難しいことではありません。
例えば、朝の挨拶。「おはよう」の一言に、「今日も一日、よろしくね」という気持ちを込めてみる。
コンビニのレジで、「ありがとう」と笑顔で言ってみる。
家族が仕事から帰ってきたら、「お疲れさま」と声をかけてみる。
こんな小さな言葉が、誰かの心を温めるかもしれません。そして不思議なことに、親切な言葉を口にすると、自分の心も軽くなっていくのです。
職場で後輩が失敗したとき、「大丈夫、誰にでもあることだよ」と言えたら。
友人が悩んでいるとき、「あなたなら、きっと大丈夫」と励ませたら。
そんな言葉が、相手の明日を支える力になるかもしれません。
81年を生きてきて
正直に言います。私も、親切な言葉をかけ続けられる人間ではありませんでした。
63歳でうつ病になったとき、周りの人の何気ない優しい言葉に、どれだけ救われたことか。「焦らなくていいよ」「ゆっくりでいいんだよ」。そんな言葉が、暗闇の中の小さな光になりました。
でも同時に、自分が元気だったころ、誰かを傷つける言葉を言ってしまったことも思い出します。
言葉は、取り消せない。でも、これからの言葉は選べる。
81歳になった今、そう思います。
あなたの言葉が、誰かの光になる
親切な言葉は、蜂蜜のように甘く、心を癒します。
完璧な言葉を探す必要はありません。ただ、相手を思いやる気持ちを込めて、優しく語りかけてみる。それだけで十分です。
あなたの一言が、誰かの今日を支える力になりますように。
今日、あなたは誰に、どんな優しい言葉をかけられるでしょうか?


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