あなたも感じたことありませんか?
会話をしていて、相手の話を最後まで聞かないうちに、自分の意見を言ってしまったことはありませんか?
相手が何か話し始めた時、「あ、この話は、こういう話だな」と判断して、相手の言葉の途中で、「でも…」と、自分の意見を挟んでしまう。
あるいは、相手がまだ話を終わらないのに、「そういう時は、こうしたらいいよ」と、アドバイスをしてしまう。
そうした時、相手の顔は、どうなるでしょう?
話すのをやめてしまう。口を閉ざしてしまう。
あるいは、「この人は、私の話を聞く気がない」という感覚を、感じるのです。
特に、日本人は、そうした「話を途中で遮られた」という経験を、非常に傷つくのではないでしょうか?
なぜなら、日本文化では、「相手の話を最後まで聞く」ことが、「相手を尊重する」という意味だからです。
でも、現代は、忙しい時代です。
誰もが、素早い返答を求めています。「結論は?」「答えは?」
その中で、「相手の話を、最後まで、ゆっくり聞く」という習慣は、失われつつあるのです。
でも、その失われつつある習慣こそが、人間関係を、深く、温かいものにするのです。
もし、そうだとしたら…
相手の話を、最後まで聞く。その力が、本当に、人間関係を変えるのでしょうか?
そして、いつも、口を開く準備をしている心で、どのように、相手の話を聞くことができるのでしょう?
古い書物の言葉
古代の知恵の書に、こんな言葉があります。
「愛する兄弟たちよ。あなたがたは知っています。誰もが聞くに早く、語るに遅く、怒るに遅くありなさい。」(ヤコブ1:19)
この言葉は、二千年前に、初代教会の信者たちに送られた手紙の冒頭にあります。
「聞くに早く、語るに遅く」
この順序が、大切なのです。
聞くことが、先です。話すことは、後です。
多くの人は、この順序を逆にしています。話すことが先で、聞くことは、後になってしまう。
なぜなら、人間は、本能的に、「自分の意見を言いたい」という欲求が、強いからです。
「自分は、こう思っている」「自分は、こういう経験がある」
そうした自分の思いを、相手に、理解させたい、認めさせたいという欲求が、強いのです。
でも、その欲求を満たすために、相手の話を遮れば、何が起きるでしょう?
相手は、「この人は、私の話に、興味がない」と感じます。
「この人は、私を、理解しようとしていない」と感じます。
その感覚が、人間関係を、遠くしていくのです。
では、逆に、「聞くに早く」という習慣があったら、どうでしょう?
相手は、「この人は、私の話を、最後まで聞いてくれている」と感じます。
「この人は、私を、理解しようとしている」と感じます。
その感覚が、人間関係を、深くしていくのです。
さらに、「語るに遅く」という言葉に注目してください。
これは、「何も話すな」という意味ではなく、「焦って話すな」という意味です。
相手の話を聞いて、十分に、相手の気持ちや状況を理解した上で、その時に初めて、自分の思いを話す。
その順序が、大切なのです。
その順序を守ることで、相手は、「この人の意見は、自分の状況を理解した上での意見だ」と感じるのです。
そして、その時の自分の言葉は、相手の心に、深く届くのです。
現代への適用
では、具体的に、「聞くに早く」という実践を、どのようにすればいいでしょう?
まず、相手が話し始めたら、「聞く準備」をしてください。
スマートフォンを見ない。時計を見ない。頭の中で、相手の言葉に対する返答を、準備しない。
ただ、相手の言葉に、耳を傾けるのです。
次に、「相手の話の途中で、遮らない」という約束をしてください。
相手が話を終わるまで、「でも…」「ただ…」という言葉を、口にしないのです。
代わりに、「ああ」「そうですか」という、相手の言葉を促す返答をするのです。
さらに、相手の話が終わった後、「確認する」という習慣をつけてください。
「つまり、あなたは、こういうことですね」と、相手の話を、要約して返すのです。
そうすることで、「自分は、相手の話を、正しく理解した」という確認ができます。
そして、「私は、そのことについて、こう思うのですが…」と、その時に初めて、自分の思いを話すのです。
その四つのステップを、繰り返すことで、相手は、「この人は、自分を理解しようとしている」と感じるようになります。
その感覚が、人間関係を、大きく、深くしていくのです。
私の経験から
私は、若い頃、営業の仕事をしていました。
その当時、私は、クライアントの話を、最後まで聞かないうちに、自分のセールストークを、話し始めていました。
「このお客さんは、こういうニーズがあるだろう」と判断して、その判断に基づいて、話していたのです。
結果は、どうだったでしょう?
成功しました。確かに、短期的には、売上が上がったのです。
でも、人間関係は、どんどん、遠くなっていきました。
クライアントは、私との関係を、「ビジネス関係」としか、見ていなかったのです。
その後、うつ病になり、ボランティアの仕事をするようになった時、初めて、「聞く」ことの大切さに、気がつきました。
年配の人たちの話を聞く。その話の途中で、さえぎらない。最後まで聞く。
その習慣の中で、初めて、相手の人生の重みが、見えてきたのです。
81歳の今、私は、「聞く」ことに、人生で、最も大切な力があることを、知っています。
なぜなら、相手の話を聞くことで、初めて、相手を理解できるからです。
そして、相手を理解することで、初めて、相手を愛することができるのです。
聞く力への道
聞くことは、簡単なようで、難しいスキルです。
でも、その難しさに、挑戦することで、人間関係は、大きく変わります。
相手の話を、最後まで聞く。相手の気持ちを、理解する。その上で、自分の思いを話す。
その習慣が、相手にとって、「この人は、自分を、大切にしてくれている」という感覚をもたらすのです。
あなたが、相手の話を聞く力を、持つことで、その相手は、あなたを、もっと、信頼するようになります。
今日、考えてみてください
あなたは、今日、誰かの話を、最後まで、聞けましたか?そして、相手の話の中に、あなたが知らなかった、何か大切なものが、隠れていませんでしたか?


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