何もしない時間が、人生を変える

信仰の歩み

あなたも感じたことありませんか?

静かな時間がない。常に何かをしている。常に誰かのことを考えている。常に何かに追われている。

現代を生きる多くの人は、そうした状態に慣れすぎて、それが「当たり前」だと思ってしまっています。でも、ふっと気づく瞬間があります。あれ、最後に静かに座ったのはいつだっただろう。あれ、何も考えずに時間を過ごしたのはいつだっただろう。

特に人生の後半に差しかかると、その思いが強くなります。あの静けさが必要だ。あの何もしない時間が大切だ。そう気づく人が増えるのです。

でも、いざ静かな時間を作ろうとすると、心がざわついてしまう。落ち着かない。何か不安な感覚が付きまとう。そういう経験をしたことはありませんか。実は、その不安こそが、私たちが「静まること」をどれほど必要としているかを、示しているのかもしれません。

もし、そうだとしたら…

もし、静まることで、初めて見えてくるものがあるとしたら。そう気づくことで、人生は変わるでしょうか。

古い書物の言葉

古代の知恵の書に、こんな言葉があります。

「静まって、私が神であることを知れ。」(詩篇46:10)

この言葉は、紀元前の古代イスラエルの詩人が書きました。当時も今も、人間の心は動き続けています。

この言葉のシンプルさに、注目してください。「静まって」と「知れ」。つまり、静まることの先に、何かが「知られる」ということです。

動いている時には見えないもの。忙しい時には聞こえない声。そうしたものが、静寂の中でははっきりと知られる。その真理を、この言葉は語っているのです。

ここで「神である」という表現は、宗教的に聞こえるかもしれません。でも、別の視点で見てみましょう。それは「自分より大きなもの」「自分を超えた力」「いのちそのもの」という意味だと考えることができます。

動いている時、私たちは自分のことだけで精いっぱいです。自分の計画。自分の心配。自分の成功。その「自分」という小さな枠の中で、心がぐるぐると回転しているのです。でも、静まった時、その小さな枠から飛び出すことができます。そして、初めて、自分より大きなもの、自分を支えている力を感じることができるのです。

重要なのは「知る」という言葉です。これは理解することではなく、経験すること。心で感じること。静寂の中で、おのずと分かってくる何かがあるということなのです。

今、できること

では、この「静まって知る」ことは、今の私たちにどう活きるのでしょうか。

まず大切なのは「意図的に静まる時間を作る」ことです。 静けさは、勝手にはやってきません。意識的に作る必要があります。朝起きて、他の誰かに会う前に、5分だけ静かに座る。夜、寝る前に、何も考えず、ただ呼吸に意識を向ける。そうした小さな習慣が、人生を変えるのです。

現代は、情報と刺激であふれています。スマートフォン、テレビ、人間関係の悩み。そうした外からの刺激が、常に心を揺さぶり続けています。その中で、意図的に「何もしない時間」を作ることは、むしろ革命的な行為です。

次に大切なのは「静まる中での呼吸」です。 人間の呼吸は、心の状態を反映しています。不安な時は浅く、焦っている時は速い。では、呼吸を意識的にゆっくり、深くしたら、どうでしょうか。心も自動的に落ち着いていくのです。

静かに座ったら、まず、自分の呼吸に意識を向ける。吸って、吐いて。その単純な営みの中に、実は、自分より大きなもの、自分を生かしているいのちの力を感じることができるのです。

そして最も大切なのは「静まる中でおのずと知られるもの」に耳を傾けることです。 その時間の中で、不安が浮かんでくるかもしれません。後悔が思い出されるかもしれません。でも、その感情さえも、静かに受け入れる。そうすると、やがて、その奥底に、小さな平穏が見えてくるのです。

それは、自分の力では到底作ることができない、何か大きなものからの贈り物のような感覚。その感覚こそが、「静まって知る」ということなのです。

私の経験から

私は81年の人生で、どれほど長い間、動き続けてきたか。

仕事に追われ、人間関係に揺さぶられ、常に何かに心を奪われていました。止まることの恐怖さえ、感じていました。止まったら、何もできなくなるのではないか。社会から取り残されるのではないか。そんな不安が、私を常に駆り立てていました。

63歳で失業した時、初めて止まることを余儀なくされました。その時、初めて、静寂を経験しました。

最初は、その静寂は苦しかったのです。でも、やがて、その静寂の中に、一つの平穏を感じるようになりました。自分より大きなもの。自分を支えているもの。それらが、静かに、確かに存在していることを、感じるようになったのです。

その経験が、私の人生を変えました。67歳で神学校に行き、今、こうしてブログを書いている。その転機の中心にあったのは、失業という「強制的な静まり」だったのです。

あなたへの願い

人生の中で、最も大切な時間は、実は、何もしていない時間かもしれません。

計画も、活動も、成功も、その基盤には、静寂があるべきなのです。その静寂の中で、初めて、人生に本当に必要なものが見えてくるのです。

あなたの心が、静まり、やすらぎを見いだしますように。

今日、考えてみてください

今夜、5分でいいので、静かに座ってみませんか。何も考えず、ただ呼吸に意識を向ける。その中で、何が見えてくるでしょうか。

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